童話 『トロンボーン吹きの豪酒』(上)
2020-07-23


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豪酒(ゴーシュ)はキャバレーバンドのトロンボーン吹きです。彼は豪快に酒を〓むので、みんなから『トロンボーン吹きの豪酒』と呼ばれていました。豪酒は今日もバンマスから叱られました。「豪酒、お前のアドリブはおもろないねん、もっとハッチャケてでけんか」

豪酒は家に帰り、冷蔵庫から缶ビールを取り出し飲み干して、その勢いで練習していました。すると、一匹のノラ猫が部屋に入って来ました。
ノラ猫はヒゲをなでながら、「シーデシ風のアドリブが聴きたいな」と言いました。豪酒は(生意気な猫だ)と思い、「分かった」と言うなり、張り裂けるような音量で「聖者の行進」を吹き始めました。最初は肉球でリズムを取っていた猫も、しばらくすると、あまりの音の大きさに部屋の中を駆け回り、「もう止めてくれ〜!」と叫びました。

「どうだ参ったか、猫なんかにジャズが分かってたまるか、バーカ」、豪酒が言うと、ノラ猫は「ふー、今日のあなたの演奏はどうかしてますね。でも、英語でcatは”ジャズ狂”のことなんですよ」。そう言うと、ヨロヨロとよろめきながら部屋を出て行きました。豪酒はその晩、酒の力を借りずにグッスリ眠りました。

次の晩、練習をしていると、ドアを叩く音がするので開けると、そこにいたのは、みすぼらしい姿をした「閑古鳥」という鳥でした。

(次回に続く)
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